住職のつぶやき

 何事にも動じない強靭な様を「泰然自若」といいます。所謂、どっしりと構えている角界の横綱の如き人の風貌を指す言葉でございます。この横綱になる為には次に挙げる七つの要素を満たさなければ横綱とはいえないそうであります。威風堂々たる気魄、筋骨隆々ずっしりとした体格、豪快な力量、巧みな技倆、善悪を見分ける識見、相手を受け入れる懐豊かな度量、威厳と気品に満ち溢れた品位だそうです。
  今年の第百回高校野球選手権大会(夏の甲子園)で、前人未踏史上初二度の春夏連覇の偉業を達成した大阪桐蔭高校に、此の「泰然自若」さが感じられました。全国から選り勝れの人材が集まった高校だけに、気魄、力量、技倆、度量は申すまでもなく、相手選手が怪我をした時には、率先してアイシングを施す識見も有り、更には負けた相手を抱擁する品位も随所で垣間見ることができました。まさに高校野球界の横綱と呼ぶに相応しい学校だなと感じさせられました。他方、決勝では大差で大阪桐蔭高校に敗れはしましたが、我が郷土秋田の代表として出場した、雑草軍団こと金足農業高校の活躍には目を見張るものがあり、多くの人たちを魅了し、県民に感動と夢と希望を与えてくれました。
  私たちの取り巻く環境も少子高齢化に伴い、一人っ子同士が結婚し、漏れなく配偶者のご両親の面倒と、配偶者の実家、そしてお墓の管理継承を余儀なくされ、どうしたら良いのか悩んでおられる方々が急増しております。また、お子様が東京等(大都市圏)にて就職し其の後結婚、秋田の自宅にはお年を召したご両親だけで生活を営むケースも大変増えてきております。このような状況下で、若夫婦にあまり自分たちの事で迷惑をかけたくないと考える両親と、自分たちの生活をすることだけでいっぱいいっぱいで、ご両親の面倒までは見れないし、お墓までは到底守っていけないという子供夫婦の考えが合致し、万が一の時には、ひっそりと家族葬をし、墓じまいをして永代供養塔に埋葬するケースも近年とみに増えております。大勢の檀越に護持され、根がしっかりとしている歴史と伝統ある横綱のような寺院でさえ人口減少の影響を受けているそうですが、地方に在る雑草の如き私が住職をしている寺院は、金足農業高校を見習い、御仏を信じ、失敗を恐れず、地道にコツコツ伝道努力を積み重ねる事が肝要と、金足農業の生徒に教わった熱い暑い夏でした。